ドクター時任は恋愛中毒
他人事とは思えず、食い入るように見つめる画面の先で、五人ほどいる審査員が次々点数を発表していく。
他のコンビの点数を知らない俺にはすぐにぴんと来なかったが、テレビの中で祈るように両手を握っている千緒の父親の瞳が、最後の審査員の点数発表の後大きく見開かれ、歓喜の表情になった。
その瞬間、派手な音とともに紙吹雪が舞い、千緒の父親は相方と固く抱き合う。
スタジオが拍手に包まれ、“優勝おめでとう”の文字が画面に踊った。
もしかして……もしかしたのか、これは。
「本当に、優勝……したようだな」
思わずそう呟くと、耳に当てたままのスマホから鼻を啜る音が聞こえてきた。
「泣いているのか……?」
『うう、だって、よかった……。すごいです、彼もだけど、彼をずっと信じて、応援してあげていた早帆も……すごい』
「ああ……そうだな」
そばにいたら、頭をよしよしと撫でてやりたいような、そんな穏やかな気持ちで、俺は水越のうれし泣きを静かに聞いていた。
そのうち、少し落ち着いたらしい彼女がこんな事を言う。
『そうだ。ごめんなさい……くだらない用事で、電話して』