ドクター時任は恋愛中毒
きっと、以前か俺が言ったことを気にしているのだろう。
しかし、今回のことは決してくだらない用事とは思わないし、何よりも俺自身が……。
「いや。……ちょうど、お前の声が聴きたかったから」
自分でも驚くほどの、優しい声が喉から出た。どうやら声帯までイカレてきたらしい。
その理由も、さすがにもう見て見ぬふりはできない。
『ど、どうしたんですか急に、時任先生……』
「……お前が変えたんだ。俺を、ポンコツサイボーグに」
『ぽ、ぽんこつ……?』
「ああ。日曜会う時に、ちゃんと話すから」
『……わかりました』
なんとなく、俺の言いたいことを察したらしい水越は、少し緊張した声で返事をした。
本当はもっと話していたかったが、そのうち大事な一言までぽろっとこぼしてしまいそうなので、名残惜しく思いながらも「おやすみ」と電話を切った。
鼓膜には彼女の声が残り、胸は甘い疼きを覚えてジンジンとしていた。
そしてその症状に、やはり、と納得する。
もう、認めざるを得ない。俺は……恋愛中毒に陥っている。
その原因物質は紛れもなく、水越真帆。
彼女の存在が、俺の全てを狂わせるんだ――。