ドクター時任は恋愛中毒
「まず、初めて言葉を交わした日に、それはそれは優しい手つきでマッサージをされたこととか」
「ええ~、何そのいきなりエロい展開は」
「いえ、藍澤先生とは違いますから。正真正銘下心のないマッサージです」
しれっと毒づいた私に、藍澤先生が口の端を引きつらせてこんな質問をしてくる。
「……え、ちょっと待って。真帆ちゃんの中で俺ってどんなイメージなの」
「えっと……白馬の王子を待ってたはずのピュアな美琴を堕落させた、色情狂の悪魔?」
「ひ、ひどい……。美琴ちゃん、反論反論!」
藍澤先生が必死で美琴をけしかけるけれど、彼女は恥ずかしそうに頬をピンク色に染めて、上目遣いに彼を睨みつつぼそっと呟いた。
「……特に反論はない、デス」
「え」
「ほーらやっぱり。美琴も、まだ自分で自分の変化に戸惑っているんですから、あんまり苛めないでくださいね?」
「おかしいな、この胸にたぎる愛のままに可愛がってるだけなんだけど……もしかして、昨夜もホントは辛かった? ゴメンね三回も天国に連れてって」
わざとらしい素振りで美琴を気遣う発言(いや全然気遣ってないけど)をする藍澤先生。
美琴は恥ずかしさで泣きそうになりながら、彼をぽかぽかと殴った。