ドクター時任は恋愛中毒
思わず彼女の手首を取って、指を添えて脈をはかる。水越は不本意そうな顔で下唇を噛んでいた。
「運動もしていないのに、一分間に百を超えている、だと……? お前、医者に診てもらった方が」
「びょ、病気じゃないですよ! 誰のせいだと思ってるんですか!」
「そう言われても……誰のせいなんだ?」
全く心当たりがなく、首を傾げる俺を、水越は般若のごとき形相で睨みつけてきて、俺はたじろいだ。
彼女は盛大なため息をつき、俺の手を振り払って「失礼します!」と大股で医局を出て行った。
……一体、何をそんなに怒っているんだ。誰か教えてくれ、と周囲を見回す。
しかし、医局メンバーはわざと俺から目を逸らすようにしてそそくさと帰り支度をし、俺をひとり取り残して去ってしまった。