ドクター時任は恋愛中毒
……くっだらない。と私は呆れるばかりだけど、美琴ときたらいちいち赤面して、悪魔を喜ばせるような反応をしてしまう。
「……やっぱり、いいです。ていうか、真帆と乗ってきます」
「そう? じゃあふたりで楽しんでおいで」
「違うでしょ藍澤先生! 美琴はあなたと乗りたいんですって」
「じゃあ三人で乗ることにして、美琴ちゃんは俺の膝の上で濡れる?」
ああ……ダメだ。救えない、この悪魔。
さすがの美琴もふざけすぎる藍澤先生にご立腹で、頬を膨らませながら私の腕を掴んで彼に背を向ける。
「……真帆。行こ」
「ああちょっと待ってよ、ゴメンって。一緒に乗るから、ね」
慌てて追いかけてきた藍澤先生が、不貞腐れる美琴の機嫌を取り始める。最初こそツンとしていた美琴もやがて笑顔に戻り、ふたりは手をつないで歩き出した。
その一歩後ろを歩いて二人の様子を見ているのはほほえましくて楽しいけれど、同時に自分がすごく邪魔者な気がしてきて、居たたまれなくなってきた。
二人とも、私がいなかったら、もっとラブラブな感じでデートするだろうに、きっとやりづらいよね……。
私はそう思って、ぴたりと足を止め二人の後ろ姿に声を掛けた。