ドクター時任は恋愛中毒
「……あの、私、ちょっと疲れたので休んでていいですか? ふたりが絶叫する姿を下から見てますから」
本心は隠して申し出たつもりだったけど、振り返った藍澤先生には私の気持ちがお見通しだったようで。
「あー、ごめん。なんか、退屈させちゃったよね? 時任のヤツ、まだ来ないのかな」
その空気を読む力はさすがだなと思いつつも、私はかぶりを振った。
「退屈なんてとんでもない。さんざん意地悪されてるのに、そんな藍澤先生のことも大好き!って感じの美琴を見てるのは楽しいです」
「ま、真帆……私って、そんな風に見えるの?」
「うん。ドМなんだなって感じ」
がーん、と音がしそうなほど落ち込む美琴を、藍澤先生が笑う。
「おお、さすが美琴ちゃんの親友。……じゃあ、悪いけどちょっと二人で行ってくる」
「はい。いってらっしゃい」
手を振りながらふたりを見送って、その姿が見えなくなると近くのベンチに腰を下ろした。
何気なくスマホを出して時間を見ると、時刻は十一時半。時任先生、十時に起きたってことは、まだまだ来れないよね……。