ドクター時任は恋愛中毒


「……あの、私、ちょっと疲れたので休んでていいですか? ふたりが絶叫する姿を下から見てますから」


本心は隠して申し出たつもりだったけど、振り返った藍澤先生には私の気持ちがお見通しだったようで。


「あー、ごめん。なんか、退屈させちゃったよね? 時任のヤツ、まだ来ないのかな」


その空気を読む力はさすがだなと思いつつも、私はかぶりを振った。


「退屈なんてとんでもない。さんざん意地悪されてるのに、そんな藍澤先生のことも大好き!って感じの美琴を見てるのは楽しいです」

「ま、真帆……私って、そんな風に見えるの?」

「うん。ドМなんだなって感じ」


がーん、と音がしそうなほど落ち込む美琴を、藍澤先生が笑う。


「おお、さすが美琴ちゃんの親友。……じゃあ、悪いけどちょっと二人で行ってくる」

「はい。いってらっしゃい」


手を振りながらふたりを見送って、その姿が見えなくなると近くのベンチに腰を下ろした。

何気なくスマホを出して時間を見ると、時刻は十一時半。時任先生、十時に起きたってことは、まだまだ来れないよね……。


< 71 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop