ドクター時任は恋愛中毒
「そういうことでしたか。じゃあ、あなたは今、おひとりなんですね?」
「はい、まぁ。今は……」
「やった! じゃあ、僕と一緒に遊びましょうよ! 僕も一人で、退屈してたんです」
犬が尻尾を振るみたいにパッと人懐っこい笑みになった彼は、いきなり私の手をぎゅっと握った。
「え? え?」
彼の顔とその手とを交互に見てパニックに陥る私に、トイプードルくんはようやくその正体を明かした。
「僕、藍澤航河(こうが)です! 天河の弟で、形成外科医やってます」
「お、弟さん……?」
顔はそこまで似てないけれど、この馴れ馴れしさは血筋……? 婚約者のことも、家族だから知ってたのか……。
あれ? でも、お医者様ということは、年下ではないみたい。
「失礼ですけど、おいくつなんですか?」
「二十九です」
「うそ! けっこう年上……!」
驚愕する私だけれど、航河さんはその反応に慣れているようで、苦笑しながらこう言う。
「よく言われます、童顔だって。それで、お姉さんの年と名前は?」
「水越真帆……二十二歳、です」
「わ、そんなに年下なんだ。大人っぽくて綺麗なのに」
お世辞が得意なのも、血筋か。でも、悪魔より毒気のない感じが、めちゃくちゃやりにくいんですけど……。