ドクター時任は恋愛中毒


「そういうことでしたか。じゃあ、あなたは今、おひとりなんですね?」

「はい、まぁ。今は……」

「やった! じゃあ、僕と一緒に遊びましょうよ! 僕も一人で、退屈してたんです」


犬が尻尾を振るみたいにパッと人懐っこい笑みになった彼は、いきなり私の手をぎゅっと握った。


「え? え?」


彼の顔とその手とを交互に見てパニックに陥る私に、トイプードルくんはようやくその正体を明かした。


「僕、藍澤航河(こうが)です! 天河の弟で、形成外科医やってます」

「お、弟さん……?」


顔はそこまで似てないけれど、この馴れ馴れしさは血筋……? 婚約者のことも、家族だから知ってたのか……。

あれ? でも、お医者様ということは、年下ではないみたい。


「失礼ですけど、おいくつなんですか?」

「二十九です」

「うそ! けっこう年上……!」


驚愕する私だけれど、航河さんはその反応に慣れているようで、苦笑しながらこう言う。


「よく言われます、童顔だって。それで、お姉さんの年と名前は?」

「水越真帆……二十二歳、です」

「わ、そんなに年下なんだ。大人っぽくて綺麗なのに」


お世辞が得意なのも、血筋か。でも、悪魔より毒気のない感じが、めちゃくちゃやりにくいんですけど……。


< 73 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop