ドクター時任は恋愛中毒


「ど……どうも」

「じゃあさっそくだけど、真帆ちゃんは、何に乗りたい?」


真帆ちゃん……。ほんと、藍澤家の馴れ馴れしさは筋金入りだな。というか、何を勝手に一緒に遊ぶ気になっているのこの人。


「あの、私、とりあえずここで藍澤先生と美琴が来るのを待って――」

「あっ! 僕、東京のおっきな観覧車乗りたかったんです! 一緒に行きましょうよ、ねっ!」

「観覧車? いや、ちょっと、待っ……」


ちっとも同意してないのに、航河さんが強引に私の手を引っ張って歩き出す。


「よかった~。慣れない東京に来てすぐ綺麗で親切な真帆ちゃんと知り合えて」


いや、親切にした覚えないし、知り合ったというレベルでもない! なんなのこの強引トイプードル! 誰か助けて……。

そんな心の叫びもむなしく、私は観覧車乗り場まで引きずられるようにして連れて行かれるのだった。





「わあ~、いい眺め」

「……そうですね」


十分ほど列に並んで、本当に観覧車に乗り込んでしまった私たち。

向かい合って座る航河さんは目をキラキラさせながら景色を楽しんでいるけど、私はまったく楽しくない。

何しろ今乗っているコレは日本でも有数の巨大観覧車らしく、一周するのに十五分もかかるらしいのだ。

初対面の、しかも悪魔の血を引いた男性と二人で密室って、気まずい上になんとなく危機感を覚えてしまうんですけど……。


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