ドクター時任は恋愛中毒
「ねえねえ。真帆ちゃんは、彼氏いるの?」
ゆっくりと円を描きながら上昇するゴンドラの中で、唐突に航河さんがそんな質問を投げかけてくる。私はびくっと過剰に怯え、警戒心をさらに高めた。
「い……いませんけど」
ちらっと彼を一瞥して答えたそばから、あからさまに食いついた反応が返ってくる。
「ほんと? じゃあ、立候補してもいいの?」
その無邪気な様子は、やっぱり尻尾をふりふり左右に揺らすトイプードルに見えて可愛いけど……若干のあざとさを感じてしまうのは、私がひねくれているのだろうか。
「いや、それは……困ります」
「なんで? 好きな人でもいるの?」
ここできっぱり答えておいた方が、逃げやすいだろう。私はそう思ってこくりと頷いた。だから、もうあんまり馴れ馴れしくしないでください。と、内心付け加えながら。
「ふうん。……でも、“好きな人”程度なら、超えられる自信あるよ、僕」
「え」