ドクター時任は恋愛中毒


「で、電話ですっ。出て、いいですか?」

「うーん、まあいいけど……誰?」


抱いていた肩は解放してくれたものの、いまだ隣に居座る航河さんが不機嫌そうに尋ねる。

答える義理はないと思ったけど、スマホの画面に映る名前を見た瞬間に自然と泣きそうな表情になってしまった私を見て、航河さんはすぐ悟ったらしい。


「ははーん、“好きな人”でしょ」


は、鼻につく言い方するわね……。むかむかしながらも彼の発言は無視して、私はすぐに電話に出た。


「もしもし、時任先生……?」

『水越。お前、どこにいるんだ。藍澤たちも心配しているぞ』


と、いうことは……時任先生も、遊園地に到着したんだ! 彼が来たらすぐに会いたかったのに、なんでこんなことに……。


「私……いま、観覧車に乗ってるんです。悪魔の弟と一緒に」


航河さんを軽くにらみつけ、私は時任先生に話した。


『悪魔の弟……? まさか、藍澤の……?』


戸惑う時任先生の声を聞いていると、ふいに手の中からスマホが奪われた。

もちろん犯人は“悪魔の弟”本人で、彼は冷酷な微笑を浮かべながらスピーカー機能をオンにすると、電話の向こうの時任先生に話しかける。


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