ドクター時任は恋愛中毒


堂々と宣言した時任先生に、たまらず愛しさがこみ上げる。

どうしよう……こんなときだけど、嬉しい。時任先生が私のこと、そんな風に思ってくれていたなんて……。

思わず瞳を涙で滲ませ感動を噛み締める私の横で、航河さんががっかりしたように肩を落とした。


「……なーんだつまんないの、両想いか。ハイハイわかりました、彼女にはもう指一本触れませんよ」


興が覚めたという様子で言った彼は、私の手にスマホを返して再び自分の席へ戻っていく。

私はホッと胸をなでおろし、それからスピーカー機能を解除して、スマホを耳に当てた。


「時任先生……今の言葉……」

『まさか、こんな状況で伝えることになるとは思わなかったがな。……俺の、本心だ』

「うれしいです……! 私も――」

『ちょっと待て。その前に、顔を見せてくれ。そうしたら俺も、改めて言うから』


はやる気持ちをおさえて、私は「わかりました」と伝え電話を切った。

すでに下降をはじめていた観覧車から外を見ると、乗り場に近づいて歩いてくる美琴と藍澤先生、そして時任先生が穏やかな瞳でこちらを見上げていた。



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