ドクター時任は恋愛中毒
◇この幸せは、お前が教えてくれたんだ
日曜日の、午前十時半ごろ。
俺は玄関の姿見の前で、自分の身だしなみをチェックしていた。
「……変、ではないだろう」
ファッションには無頓着なほうであるが、清潔感だけは気にして服はモノトーンで統一した。これで、水越の隣に並んでも彼女の魅力を損なうことはないはず……。
そういえば藍澤が、今日の水越について“目を離したらナンパされるてしまうかも”というようなことを話していたな。
いったいどんな格好をしてきたというのだろう。まさか、肌の露出が多いわけじゃあるまいな。そんなもの、不特定多数の人間に見せるわけには……。
「いかん、もうこんな時間か」
いつも水越のことを考えはじめるときりがなくなる。しかし、今日は本人に会えるのだ。
考えるより先に、伝えなくては。彼女へのゆるぎないこの想いを。
*
車で自宅を出て、特に混雑や渋滞もなく遊園地にたどり着くことができた。チケットを購入し園内に入り、連絡のためスマホを取り出した俺だが、そこで一瞬悩んだ。
ここはとりあえず藍澤に連絡するか、それとも水越に連絡するか……。
そんなものどっちでもいいだろうと、過去の自分が今の俺を見たら冷めた目をするのだろうな。しかし……本当に、どちらにしたらいいだろう。