ドクター時任は恋愛中毒
頭から煙が出そうなほど迷いその場に立ち尽くしていた俺は、結局電話するより先に藍澤たちに見つけられた。
「時任! よかった、思ったより早かったな」
「こんにちは、時任先生」
藍澤と婚約者の美琴さんが並んでる姿を見るのは二度目だが、何度見ても同じ感想になる。
「ふむ。……まさに天使と悪魔」
「失礼だな時任、美琴ちゃんは悪魔なんかじゃ――」
お前、よくもまぁ自分のことを天使だと思えるな……。
図々しい思い違いをする藍澤を無視して、俺は美琴さんに向かって頭を下げる。
「……今日は俺たちのために予定を合わせていただいてありがとうございました。ところで、水越の姿が見えないが……」
「あ、そうなんです。真帆、さっきまでいた場所からいなくなってて……」
「俺たちも探してるんだけどさ。やっぱナンパされちゃったんじゃない?」
「でも、真帆はそういうのついていきませんよ」
無責任な予想を述べる藍澤に、美琴さんが渋い顔で反論した。