ドクター時任は恋愛中毒
「彼女に連絡は?」
「あっ、そうだった。すっかり忘れてました!」
「じゃせっかくだし時任がしてみてよ」
「……ああ」
そんな経緯で水越に電話をかけてみたところ、とんでもない緊急事態に陥っていることが発覚した。なんと、藍澤の弟に拉致されて観覧車に監禁されているというではないか。
なぜ、よりによって観覧車なのだ。藍澤のいうところの“彼女にあらゆるイタズラができる”危険地帯ではないか。
というか! 観覧車には俺が一緒に乗りたかったのだぞ…!
顔には出さないが、内心怒り爆発である。
しかも、そのうち水越の代わりに電話の向こうで喋り始めた藍澤の弟が、彼女にキスをするなどと不届きなことまで言い始める。
お前……弟の教育はどうなっているのだ! と藍澤をひと睨みしてから、俺はなんとか怒りを堪えつつ言った。
「……彼女に手を出してみろ。この俺がただじゃおかない」
具体的にいえば、お前の頭の中をパカッと開いて、煩悩という煩悩をすべて排除し、二度と女性に興味を持てないサイボーグに作り替えるオペをしてやる……!
……などと子供じみた悪態をついていたことは、水越には秘密である。