ドクター時任は恋愛中毒
しかし、それでもなお俺への挑発をやめない藍澤弟(本当に教育はどうなっているのだ!)を黙らせるため、俺はとうとう彼女への想いを口にした。
水越真帆は、世界中の誰より大切な女性である、と――。
その電話はどうやらスピーカー機能で水越本人にも聞こえていたらしく、意外な形で気持ちを伝えることになってしまったが、彼女はうれしそうだった。
彼女自身も俺に伝えたい言葉があるようだったが、俺は直接顔を見て話したかったために、一旦電話を切った。
そうして、彼女たちの乗るゴンドラが下まで降りてきたときに、水越には「そのまま乗っていろ」と告げると、藍澤弟と交代するようにして俺がゴンドラに乗り込んだ。
特に深く考えず水越の向かい側に腰を下ろしたが、ふと気が付けば水越の方が立ち上がって俺の隣にストンと座った。
女性特有の甘い香りがふわんと鼻をくすぐり、俺の胸の中の小動物が切ない鳴き声をあげる。
このような密室で、こんなにも近くに彼女を感じていると、色々と自制できる気がしないな……。水越の横顔を見つめそんな不安を抱いていると、彼女の方から先に口を開いた。
「ご心配、おかけしました」
気まずそうに笑う水越に、俺はゆっくり首を振る。