ドクター時任は恋愛中毒
「天河の奴、婚約者サンといちゃいちゃしたいからって、最初はホテル泊まれってうるさくてさ。でも、遊園地での一件のあと渋々了承してくれた。まぁ、もともとそのために、天河の行き先ストーカーして、キミに声を掛けたんだけどね」
「……? よく意味が」
「天河と親しい女の子囲い込んじゃえば、俺をマンションに住まわせる気にもなるかなって思って……まぁ、つまりは真帆ちゃんのこと利用したってこと。ゴメンね?」
「はぁ、なるほど……」
もう、この人がどんな悪事を働いていようと驚かないけど、どうしてそこまでして悪魔のマンションにこだわるんだろう。経済的な理由って感じはしないけど。
「ちなみに、どうしてホテルじゃダメなんですか?」
「あ、聞きたい?」
「……いや別に」
ふい~、と目を逸らして気のない返事をする私に、航河さんは口をとがらせる。
「もう! ほんとにつれない子だな真帆ちゃんって。僕、夏になったらこっちで美容形成外科のクリニックを開業するんだ。そのためにお金が必要だから、節約できるとこは節約したくて」
「美容形成……?」
治療を目的とする患者さんの集まる、いわゆる普通の病院に勤める私には耳慣れない診療科目だ。