漢江のほとりで待ってる


エレベーターに乗り込んだ三人。

「知ってました? あの秘書の青木さん、あぁ見えて三四なんですって! 副社長のお気に入りで信頼度もハンパないから、会社に関する決定権まで、副社長は委ねてるみたいですよ? 彼女に睨まれた社員は首になるとか! 笑った顔誰も見たことないんだそうですよ? だからあだ名もその名の通り冷徹女!」

と甲斐愛梨が言い出した。

「どこの情報? 仮にも秘書がそんな権限あるわけないでしょ! それにそんな風に見えなかったし? でも三四には見えな~い。仕事出来て綺麗だし、若く見える! 憧れちゃうわ~」

と仲里優那が褒めた。

由弦もまた、仲里優那と同じように感じていた。

「周りが噂するほど冷徹には見えないけど……」階数表示をぼうっと見上げながら思った。

「でもでもぉ~、過去に社員の不祥事があって、副社長はその社員の弁明すら聞かず首にした件があってぇ~、それも秘書の青木さんが、副社長に会いたいって言う社員の懇願も聞かず、「副社長はお会いになりません!」ってシャットアウトしたせいで、辞職に追いこまれたとか~。それに綺麗でもおばさんだし! 女としては~魅力に欠けるかも! 副社長も無表情だし、結構非情な所あるらしいから、お似合いの二人ね!」

「そうなの? 非情かどうかは分からないけど、辞めざるを得ないほどの失態をさらしたんでしょ? でなきゃ副社長だって辞めさせたりなんかしないわよ! それに? 青木さんホントに綺麗で魅力的だと思うけど!? 副社長だってクールなだけかもしれないし?」

自分の話に賛同してくれると思っていたのに、期待を裏切られて不満気な顔を見せた甲斐愛梨。真っ向から甲斐愛梨の意見に反対する仲里優那だった。

「甲斐さん?どこで誰が聞いてるか分からないから、確証のない噂話は慎むようにしないとね?」と由弦。

「は~い! あのぉ専務~! 愛梨のことぉ~愛梨って呼んでください!」

「……」

「……」

返す言葉がなく呆れる由弦と仲里優那。


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