漢江のほとりで待ってる
「副社長もよく本を読んでいらっしゃるから、やっぱり兄弟なのね?」
「あ、あぁ~、兄貴?兄貴は子供の頃からずっと片手に本を持ってた、そのイメージしかないよ」
「ふふ。すぐに想像がつくわ!副所長は休日何をされてるのかしら?」
「最近の兄貴は分からないけど、本を読んだり、音楽聞いたり、あまり外に出掛けるようなタイプじゃなかった」
「やっぱり!小さな頃はどんなお兄様だったの?」
「ん~、一人でいることを好んでた。友達と遊んだり、走り回ったりしてるとこは見たことがない」
「それは現在でも変わらないみたいね~?物静かで、時折何を考えてるか分からない時があるから、近寄り難い」
「あぁ~。そう見えるだけで、話しかけたらちゃんと答えて来れるよ?いつもオレにはとても優しかったし」
「そうなのね?ならそれは今も健在ね!テレビはご覧になる?」
「見るけどニュースばっかり見てる」
珉珠は笑った。
慶太の話をしている時の彼女は、とても素敵な笑顔をする。それを見て落ち込む由弦。
明るかった由弦の顔から笑顔が消え、少しづつ元気がなくなった。
「どうしたの?」
「いえ、何でもないです……あの、
この間の話、オレがあなたに好きだと言ったこと、あれ、本気だから!」
訴えるような淋しい顔で由弦は言った。
それを聞いて珉珠は、俯いた。そして、
「専務のお気持ちは嬉しいけれど、受け入れられない……年の差もあるけど、それに、好きは好きなんだけれど、専務を弟にしか思えないです。ごめんなさい……」
「そうですか。でもオレは諦めませんから!」
心は折れていた由弦。それでも気持ちを奮い立たせて、食事を済ませた後、他に色々と予定を立てていた由弦だったが、そんな雰囲気でもなく、また、自分が一番倒れそうなほど、心に打撃を食らっていたのもあって、そのまま珉珠を駅まで送り、笑顔で見送った。
「じゃ、また会社で!今日はありがとうございました。気を付けて帰ってくさださい」と頭を下げた由弦。
「はい。こちらこそ、ありがとうございました」
頭を下げてそのままホームへと消えて行った珉珠。