漢江のほとりで待ってる


「すまない……君たちが付き合っていたのは知っていた。知っていながら私はあえて君と結婚した。会社のため、まだ若く意志の弱さ故、流されるまま来てしまった。私さえしっかり断ってさえいれば、こんな悲劇は生まなかった。慶太が生まれて間もなく、椎名は執事になった。君たち親子が一緒に暮らせるのならばと思い、私はそれを承諾した。私が慶太に愛情をかけずとも、椎名が全力でそれを補った、それは当然、自分の子だから、父親だから。ふっ、何とも疎外感があったよ、表向き私の子でありながらそうではない。私は慶太を避けるようになった。でもそれは間違っていた!何も知らない慶太にとっては、紛れもなく私が父親なんだから!」

「そ、そんな……私が、椎名おじさんの……?」慶太は崩れ落ちた。

「け、慶太さん!」雅羅は慶太に駆け寄った。

「あなたは、こんな時になぜ慶太さんの前でその話をするの!!やっぱり由弦さんには死んでもらうわ!」雅羅は由弦の首に手をかけた。

「よさないか雅羅!!」止める弦一郎。

「母上……もう疲れたよ……」絞り出すような声で慶太は言った。

一同、慶太の方を向く。



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