漢江のほとりで待ってる


「父上……」

初めて親子が抱き合った。

そして、珉珠は由弦の手紙を、弦一郎に渡した。

それを開いて読んだ弦一郎は、

「何てことだ……由弦は死を覚悟していたのか。こうなるって分かっていたのか。自分の存在を否定させてしまっていたなんて。酷だ!こんな酷なことはない!息子に遺書を託されたようなものだ!私は分かっていながら最後の最後まで息子一人、何一つ救えなかった!由弦、父さんはお前が生まれて本当に嬉しかったんだ!どんなにか淋しかったろう、辛かったろう、それでもちゃんと人を愛して懸命に生きていたのに……」

「まだ結果は出ていませんよ。まだ終わってない!高柳も闘っている真っ最中です!社長はまだ出来ること、やるべきことがあるはずです!」一条が言った。

「目が覚めたら由弦さんに、さっきの言葉言ってあげてください!」珉珠も涙を流しながら言った。

「由弦!早く戻って来い!青木君のためにも!寝ずにお前に付きっ切りで看病してるんだぞ!お前を愛してるからだ!青木君だけじゃない、みんなお前を待ってる!情けない兄貴だが、私もだ!今度一緒に野球やろう!だから、早く目を覚ませ!」

由弦の手を握りながら慶太は叫んだ。

< 159 / 389 >

この作品をシェア

pagetop