漢江のほとりで待ってる
由弦が目覚める十五日前の、それぞれの償いがあった。
雅羅が、由弦に手をかけたことで、駆け付けていた看護師の一人が事の重大さに気付き、警察に連絡していた。
警官が来てから、その場を弦一郎は阻止しようとしたが、雅羅も慶太も、素直に対応し、罪は罪として、事の全てを甘んじて受ける覚悟をしていた。
弦一郎は保釈請求書を出し認められたが、慶太はそれを断り、拘留期間中は留置場で過ごす意思を示した。
彼なりの罪の償い方だった。
「あまりにも甘過ぎる。死の淵を彷徨っている由弦に申し訳が立たない」
頑なに慶太は思いを押し通した。
そして二人は起訴された。
悪質で身勝手極まりない犯行と思われがちだが、それぞれ、長きに渡り、高柳グループを支えたこと、そして、すでに世間から非難を浴び、自身の地位や名誉も落としたことで十分な償いもしている、また夫や父に愛されないというそれぞれの境遇や生い立ちなど、さらに、高柳グループの被害や名誉も彼らには回復でいるという理由から、情状酌量の余地が認められた。
椎名に関しては、例え愛する家族のためとは言え、人を傷つけることは決して許されることではない!行き過ぎた犯行と厳しく追及され、しかしながら、その後すぐに由弦を救い出したことや、長きにわたり高柳グループを支え、陰ながら家族を見守っていたこと、そして本人は深く反省していることが認められ、執行猶予は付かなかったものの、懲役刑より軽い禁固刑二年の実刑を受けた。椎名は控訴はしなかった。
実刑を受けなかったとは言え、雅羅も慶太もその代償は大きかった。