漢江のほとりで待ってる
スーツを脱いだ、いつもと違うラフな姿の慶太が、由弦の病室を訪れた。
相変わらず、由弦の傍を離れないで、看病する珉珠がいた。
珉珠と話す由弦は、いつになく、またいっそう幼く感じた。
「あ!兄貴!元気だった?具合はどう?もういいの?」
みんなは今の由弦の状態を考え、本当のことは言わず、慶太は少し体を壊して会社を休んでいると言っていた。
「あ、あぁ、もう大丈夫だ。それより、お前はどうなんだ?」
「オレはこの通り元気だよ!この脚さえ直ったらリハビリだね!」
何の後遺症もなく順調に回復しているのが伺えた。
「青木君、これ」
そう言うと慶太は、以前、珉珠が突き付けた退職届を彼女に返した。
「今の私には預かる資格はない」
「でも私はもう……それに、彼の傍にいたいんです」
「分かっている。由弦が普通の生活に戻れるまで待つ。高柳グループには君が必要だ、それに由弦が復帰したら、誰が秘書をするんだ?」
「じゃぁ彼はまた!?」
「ああ!うちにとって必要不可欠な存在だから」
二人穏やかな笑顔を見せた。
「青木さん、兄貴のこと好き?」
微笑ましい二人を見て由弦は言った。
「えっ!?」
「何を馬鹿なことを言ってるんだ!」慶太が割って入った。
「何で?」不思議そうな顔をする由弦。
「そんなことある訳ないだろ!」
「そうかな~二人お似合いだけど」
いつかも由弦はそんなことを言っていた。
なぜだか、珉珠の中に不安が過った。