漢江のほとりで待ってる
次の日早速、珉珠は由弦の部屋に行った。
確かに、物凄い荒れようだった。
辺りを見渡すと、壁のすぐ下の隅の方に、何やら落ちていた。
近付くと、それは時計だった。すぐに自分とお揃いの時計だと分かった。
文字盤のガラスが割れ、細かな部品も辺りに散らばっていた。
この時の由弦の心境を、珉珠は理解することが出来た。
この部屋はあの日の時間のまま止まっている。
それをそっと拾い上げた。落ちていた部品一つ残らず。
今の由弦の状況を思うと、胸が痛くなった。
「はぁ~っ」
哀しみに浸っていても何も進まない!思い直して、掃除に取り掛かった。
テーブルの上の物も片付けようと、無造作に置かれた、何枚かの紙に目が行った。
よく見るとそれは領収書「振込金受取書」だった。
すると、「パク・ジュウォン」の名前が飛び込んで来た。
ハッとして、よく見ると、珉珠の母親の事務所宛てに送られた領収書だった。それも多額の。
「どういうこと!?なぜ由弦の部屋にこんなものが置いてあるの?」
体に衝撃が走ったと同時に、珉珠は領収書を手に取り動揺した。
「まさか!?ほんとに!?でも!由弦は……」
選択肢から外した由弦が、まさかの!?パク・ジュウォン!?
気が動転して考えがまとまらない。
でもそんなはずはない!彼はその時ほんの十五才、そんな少年に多額の、まして十年も寄付なんて続けられる訳がない。
ますます訳が分からない、とりあえず由弦本人に確認するしかない。
はやる気持ちを抑えて掃除を済ませ、由弦の着替えも用意して、珉珠は病室に向かった。