漢江のほとりで待ってる
病院の外のベンチに座ると、美桜は、
「単刀直入に言いますけど、私がいる以上、あなたの役目は終わりじゃないですか?」
「……!?」
「今のユヅにとって、彼女は私ですよね。例え、仮に、あなたが彼女だったとしても、ユヅの中にあなたは秘書でしかない」
「……」
「私に全て任せて頂けませんか?」強く美桜は言った。
「……」
「全く来るなとは言いません!付き添うのではなく、たまに見舞客の一人としてなら……」
「もし、彼が記憶を取り戻したら?」
「そ、それは~」
「そうなったら、離れていた時間をあなたは埋められますか?」
「……」美桜は返事に困った。
「今この時点で、彼女じゃないから、役目を果たしたからとか、そんな理由で付き添うのを止めることはしたくありません。もしもって時に、彼が混乱を起こしたら、その方が私は耐えられない。自分の気持ちより、彼の心や体を優先したいだけです!」
「……っ!!でもユヅは私を好きだと言いました!もし記憶がなくても、あなたに惹かれてるなら、私に好きだなんて言わないと思うですけど!それにこのまま記憶が戻らないかもしれないし、一生かも……」
「そうね。それはそれで仕方のないこと。流れに任せるしかない。あなたを好きならそれも仕方のないこと。執着する気もない。私はただ彼が苦しまずに、自然に記憶を取り戻してほしいだけ。彼が心配なだけだから」
溜息まじりの笑顔で、そう言い残して、そのまま珉珠は戻って行った。