漢江のほとりで待ってる


三人での飲み会の夜、無言で勢いよく飲み続ける由弦。

その勢いに仲里は心配になり、

「高柳さん、ペース落としましょう!」

「大丈夫!ちゃんと意識あるし、話も聞いてる!」

そう言いながらもかなり酔っている様子。

「らしくないですよ?何かあったんですか?」

「専務~いっぱい飲んでください!愛梨が~ちゃんと介抱してあげますから~」

「あんたはちょっと黙ってて!」

「そんな言い方しないでくださ~い!」

「はぁ~、あんたは黙って飲んでて!高柳さん、何でも一人で背負い込むと壊れてしまいますよ?」

「ははっ。人の気持ちなんてどうにもならないからね~。絵を描いたり、文字を書いたりするのとは訳が違う!描くだけなら自分の好きなように、思い通りになるのにな……くだらないことに気持ち左右されるし!」

「くだらないこと?好きな人にでもフラれたんですか?」

仲里の言葉に笑って誤魔化した由弦。

「もしかして~、専務の好きな人ってぇ?あの青木さんですかぁ?」

「ちょ、ちょっと!あんた露骨に!」

甲斐の肩を叩いた仲里。

「痛い~!だって専務ぅ~青木さん見るたび、声掛けたり~、手を振ったりしてるじゃないですか~?」

「そうだっけ!?」答えてそのまま、テーブルに額打ち付け記憶を失くした由弦。

「あ~あ、落ちちゃった……こりゃ相当だな?」気持ちを察した仲里。

「何かぁ~もっと色々聞きたかったのにな~。失恋の話とか?泣き崩れる専務を愛梨がよしよししてあげたかったのに~」

「はぁ!?だいたい男がめそめそと失恋の話で女の前で泣くとか有り得ないし!高柳さんだから……彼は必死で耐えてるのよ」

「え!?もしかして~、仲里さん?専務のこと好きなんですか?」

「ち、違うから~!まだ、そういうんじゃない。でももし、告白されたらつき合っちゃうかもしれない!」

「えー!!ダメですよ!専務は愛梨が~!」

「ただ仕事してる時の高柳んさんは好き!特にデザイン画見てる時の顔はとても生き生きしてて素敵!あと、いつもふざけてるように見せてるけど、制作チーム一人一人の事よく見てるし、何気に気遣ってるし。まだ私達に見せてない、もう一つの顔!いつか必ず発揮されるわよ!」

「え~?どういうことですか?」

「あんたさ?好きならしっかり見てなさいよ!」

「見てますよ~!絶対負けないんだからぁ!!」

二人で由弦を抱えて店をあとにした。

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