漢江のほとりで待ってる
地面に横たわったまま、意識が戻り、ゆっくり目を開けた由弦は、涙がこぼれ落ちた。
「彼女だったんだ。珉珠さん、あなただったんだ……」
入院していた間も、彼女から名前を呼ばれることに違和感がなかったのは、珉珠だったから。
彼女がいつも傍にいることも自然だったのは、珉珠だったから。
彼女が来ない日が淋しかったのは、自分の大好きな人だったから。
自分を呼ぶのは、他の人ではなく、珉珠でないとダメなのは、大好きな人の声だったから。
記憶が一気にパノラマのように思い出されて行く。
大好きな笑顔で自分の名前を呼ぶ人、目を覚まし、記憶が戻ったら、彼女だけがいない。
自分の中に、あなただけがいない。
いつもあんな近くにいたのに、分からなかったなんて……
ちゃんと目覚めたのに、キミがいない。
ずっとずっと見守ってくれていたのに、どうして!
わさび畑が広がるあの場所での記憶も。
「なら離さないで?」
「離さない」
誓い合ったはずなのに。
由弦は苦しくて胸が張り裂けそうになり、思わず声を上げて泣いた。
「うわぁーーーっ!!あっあっあーーーっ!うっうっ」
―――― キミがいない……