漢江のほとりで待ってる
その時、珉珠のスマホに、兄から連絡が入る
「先日母さんが倒れた!お前に話そうと思ったが、母さんが言うなと言ったから黙っていたが限界だ!一時は入院したんだ。今は起き上がれないほどだ。忙しいのは分かるが一度様子を見に帰れ」
実は数年前から、母の具合が悪いことは、度々兄から連絡が来ていた。けれどすぐに帰れる距離ではないことに、頭を悩ませた。
慶太にも相談しようと考えたが、いつも難しい顔している彼には言えそうになかった。
母親のことが気になりながらも、仕事を休むわけにも行かず、事情を隠して仕事に従事ていた。
今回はもう後伸ばしには出来ない状況。母親に連絡してみたものの、応答がない。余計に気になる。
兄も仕事ですぐに母親の元に帰れない。兄ばかりに負担を掛けるわけにも行かない。
どうしようか悩んでいたら、こんな時、一番に頭には由弦の顔が浮かんだ。
「あんなことがあったあとだし、どうしよう……私、彼の連絡先知らない!ううん!社用なら社員名簿見ればすぐに分かる!でもこんなことを社用なんかで知らせたくない!」珉珠のプライドが許さなかった。
珉珠にそんなことが起きてるなんて知るはずもなく、プレゼンを目前にしていながらも、どうしても一目に珉珠に会いたくて、由弦は社長室付近の様子をこそこそと見に行った。
すると、社長室前に彼女を見つけた。何だか彼女はとても沈んでるように見えた。
「何かあったのかな……元気がないみたいだ」遠目で由弦は思った。
見ているとどうにもたまらなくなり、彼女の近くまで行き、
「青木さん!大丈夫?何かあった?元気ないみたいだけど」
その声に振り向くと、一番会いたい人、由弦だった!彼の顔を見た途端、思いが込み上げたのか、珉珠の目元が下がり、今にも泣き出しような表情だった。