漢江のほとりで待ってる


会社に戻った由弦は、社長室に怒鳴り込んだ。

「兄貴!もっと青木さんのこと気に掛けてやれよ!」

「ん!?何事だ?いきなりどうしたんだ?」

「どうしたんだ?じゃないよ!大事な秘書なんだろ!?文字ばっかりと睨めっこしてないで、もっと近くにいる、支えてくれる人の様子を見てあげなよ!」

「だからどうしたんだ?」

「青木さんのお母さん、倒れたらしい!きっとここんとこ元気なかったはずなんだ。で、今日オレその話聞いてその足で空港まで送った。何度か兄貴に打ち明けようとしたと思う!けど兄貴は彼女のことなんて見てなかった!彼女、どれだけ苦しかったと思うよ!親の体の具合が悪いの分かってて、何も気付かない兄貴の面倒なんか見て!……はぁ~。あ!二、三日、いや一週間ほど彼女の休暇願頼む」

「分かった。はぁ~、そうだったか……全く気が付かなった、すまん」

「オレに謝っても仕方ない。戻ったら彼女に気遣ってあげてよ!」

「わ、分かった……」

由弦が自分に声を荒げるなんて、まして怒りを露わにするなんて初めてのことだった。慶太は驚いていた。

この日の予定は消えた。副社長が来ていたことで、社内もソワソワしていたが、急遽、慶太が帰って行ったことが分かると、拍子抜けした状態になった。



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