漢江のほとりで待ってる


飛行機の中で、由弦の連絡先が書かれたメモ書きを握りしめた珉珠。それが不安を軽減させてくるような気がした。

韓国ソウル特別市瑞草区の郊外。久しぶりに実家に戻った珉珠。

日付が変わるまでに着くことが出来た。

部屋で休む母親の側に行き、母親の寝顔を見つめて手を握った。

そっと目を覚ました母、

「あら!ミンジュ……戻ってたの?仕事休んで大丈夫なの!?私のために時間を無駄にしないで?」

痩せ細った青白い母の顔、一段と小さくなったように見えた。

「何を言うの!そんなこと言わないで?大丈夫だから。ゆっくり休んでて?……ごめんね?長い間顔も見せないで」

「あなたこそ何言ってるの!立派な企業に就職して、あなたは私の誇りよ!」

「お母さん……もう無理が利かない体になってるんだから、不整脈もあるし、またいつ倒れるか分からないでしょ?無理はしないで?」

珉珠の母は、ボランティア事務所を個人で経営していた。始めた頃は金持ちの道楽だのと、心無い非難を浴びた。けれど、母のどんなことがあっても挫けない、諦めないという熱意とひたむきな活動が、人の心を開き次第に母を認めて行った。今では彼女はこの辺りでは、なくてはならない存在ににまでなって行った。また未だに自らも色んな所に回り活動をしていた。心臓も弱い上に、その疲労が重なり、今回倒れた珉珠の母。

「分かってるわよ。でも助けを必要とする人はたくさんいるから。それに、あなたのお父さんとの出会いのきっかけにもなったのよ?」

珉珠の両親は、お互い学生の頃、ボランティアで、教会の炊き出しの手伝いをしていた。二人はそこで出会い、互いを尊重し合いながら、愛を深めて行き結婚した。

母は大学を卒業後も、そのままボランティア活動を続け、個人でボランティア事務所を立ち上げた。

「あなたのお父さんは、たくさん食材を提供してくれたり、仲間を連れて来て積極的に手助けをしてくれた。この国がもっと、小さな子供からお年寄りまで、貧富の差をなくし、住みやすい社会になるようにって、いつも言ってたわ」

「そうね?父さんは、私にもそれをよく言ってた。そんな父さんも亡くなって十年……家に帰って来たものの、あの時は、慌ただしくてゆっくり話なんてしてられなかったもんね」

「そうね。月日の経つのは早いわ~」

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