漢江のほとりで待ってる


「ふふ。お金ならありますって!それでどうしたの?」

「とりあえず、会うことにしたのよ!会って事情を聴いて、諭して帰そうかとも思ったの。それにこの頃、母さんのいた鍾路区の事務所は、経営不振で寄付金を募っていたのよ。最悪、事務所を閉めようかとも思ってた。でもあの子、面白いことを言うのよ?この漢江の橋を歩いて越えて来たように、越えられないものなんて何もない!って」

「どういうこと?」

「母さん以前、ホームページで、寄付はお金がある人がすればいい!身一つで何だって出来る!人助けだって出来る!みんなが出来る範囲で出来ることをすればいい!って書いたのよ。その言葉をその少年が深く胸に刻んでたらしくて、今の経営不振も必ず解決できる!!身一つさえあれば越えられないものなんて何もない!ってその言葉に乗せたみたい」

「その少年なりの励ましね?」

「そうなの。子供に励まされるなんてね?」

「それで、置いてあげたの?」

「そう。よく働く子だったわ~。それも楽しんでるかのように。人懐っこくて、誰にも優しくて、誰かが悩んでたら自分のことのように寄り添って」

「そうなんだ。その子救世主ね?……その子の名前は?」

「確か、イ・ジュンだったかしら?」

「日本人なのにイ・ジュン!?」

「ん~、お母様が韓国人らしいの。でも三ヶ月ほど経った頃かしら?高級車が迎えに来てジュンを連れて行ったのよ。あ!でもこの頃からよ?匿名で寄付金が届くようになったのは。今年で十年目」

「十年?しかも匿名?その少年と何か関係があるのかしら?」

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