漢江のほとりで待ってる
ミーティングルーム室。
「もう戻って来たんですか?お母さん大丈夫なの?」
「ご心配ありがとうございます。何とか大丈夫です。専務のお陰です。ありがとうございました」
安堵した由弦の前に、封筒を差し出した珉珠。
「……ん!?」
「あの時、搭乗手続きの時に気付きました。専務が渡してくださった、メモ書きと封筒の中にお金が……」
由弦はメモ書きを珉珠に渡す際、封筒にお金を忍ばせて渡していた。
「あぁ~、あれはお見舞い金のつもりで。それに、あの時慌てて出て来たでしょ?だからもしかして持ち合わせがなかったらとか思って……そんな訳ないと思うけど、わざわざ返しに来なくてもいいのに」
軽く笑ったまま由弦から目を離さない珉珠。引こうとしない珉珠の意志を理解した由弦は、
「分かりました!でも、一度出したものをオレも受け取れない。だから組合費にでもしてください」
由弦がそう言ったあと、
「分かりました。お気持ちだけ頂いておきます」
と珉珠は封筒を下げた。
「専務?副社長が、あとで来るようにとの事です。伝えましたよ?忘れないでください?」
「分かりました!」
ミーティングルームを出たあとも、由弦のことを思い出し、珉珠は心が弾んだ。
誰もこの時、彼女のテンションが高いことに気付かない。