漢江のほとりで待ってる
「待って!お願いだから!違うの!」珉珠の声も振り払って、由弦は会社の外へ飛び出して行った。
無我夢中で走り続けた。息を切らして、会社から離れた街路樹の側にある椅子に座った由弦。
「何で逃げる必要があったんだろ、バカみたい……フラれた上にあんなシーン見せられれたら誰だってあ~なるよな!?」そう思っていると、しばらくして同じように息を切らして、探し回ったであろう珉珠が追いついた。
「足、速いから……」
呼吸を乱しながら、由弦の前に座り込んだ珉珠。見ると、ヒールを手に持っていた。
きっと途中で、走りづらくて脱いだのだと思われた。彼女らしからぬ、足は伝線だらけになっていた。
由弦が逃げないように腕を掴んで、息せき切って、
「お願い!話を聞いて?違うから!」
「何が?別に何もいい訳する必要もない!オレ達付き合ってる訳でもないし」
「そうだけど、でも違うの!」
珉珠の姿を見兼ねて、椅子に座らせ、由弦はスーツの上着を脱ぎ、彼女の膝に掛けてやった。
「ちょっと待ってて」
そう言うと由弦は大通りに出て行った。しばらくして戻って来ると、キャップを開けてペットボトルを差し出した。
珉珠のために水を買って来たのだ。
「ありがとう」と珉珠。
珉珠は受け取り、一口飲んだ。
「落ち着いた?あなたが誰を好きだろうと、誰とつき合おうとあなたの勝手だし、それに勝手にオレが好きなだけだから」
「だから、誤解してほしくないの!」
「!?」珉珠の顔を見る由弦。
「さっきのは、転びそうになった所を、副社長に受け止めてもらっただけなの!」
「別にそれをオレに説明する必要なくない!?」
「あるの!あなたには誤解されたくないの!」
「何で!」
珉珠の歯切れの悪さに、由弦は少し苛立った。