漢江のほとりで待ってる
春の陽射しに、青々と潤ったイチョウの葉が風に揺れた。
その風の音と共に、
「あなたが好きだから……」
そっと彼女から聞こえて来た。
「……!?」
一瞬時間が止まったような気がした。さらに、風が彼女の髪を撫でて行った。その時の彼女は眩しくて、一段と綺麗に見えた。
動揺した由弦は、言葉を探し出して、
「だってあの時、オレを受け入れられない、弟のようにしか思えないって……それに、兄貴といる時はとても楽しそうで、兄貴の話ばっかりするし、オレにはあなたを笑顔には出来ないと思った」
由弦の言葉のあと、珉珠は首を横に振った。
「確かに初めのうちはそうだった。でも、あなたと接してるうちに、自分の中であなたの存在が変わって行ったの。それに年が離れてるし、世間体とか考えたら……何度も思いを抑えようとしたの!でも気が付いたらあなたのことばかり考えてるし、何かあると真っ先にあなたの顔が思い浮かぶ。副社長には本当に尊敬の気持ちだけ。私生活が見えない分、普段はどんな感じなのか興味を持っただけなの」
「ふ~ん。年なんか、オレは気にしてないのに。高が九つ。乗り越えられないほどの差じゃないのに。でも不可抗力とは言え、抱きついてた時間長くない!?何かあるときは、今度はオレに抱きついてよね!」
俯いた由弦に、ふっと笑いながら、
「分かった。ごめんね?」と珉珠。
そして、由弦の頬に手を当てた。