漢江のほとりで待ってる


「あ!今夜、副社長に食事に誘われてるの。弟に叱られたから、その埋め合わせにって」

「なんだそれ!まぁ勝手に行けばいいじゃん!」

珉珠は由弦のふて腐れた顔を見て、クスっと笑って、

「すぐに帰って来るわ?帰ったらちゃんと電話するから」

そう言って由弦をなだめた。

「じゃぁそれ、今すぐ証明して?」と由弦。

一瞬、意味が分からなかった珉珠は、キョトンとした顔をした。

そんな珉珠に、由弦はいきなりキスをした。

唇が離れたあと、

「好きだ」

「私も好きよ……由弦」

初めて自分の名前を呼んでくれた珉珠に、由弦はハートを鷲掴みされ、照れ笑する由弦。

それを見て、思わず「可愛い人……」と思う珉珠。

そのあと、由弦は珉珠に靴を履かせてやり、タクシーを拾った。

由弦は彼女の足元を見ながら、

「破れちゃったね?」

―――― オレのために周囲の目も、格好なんて構わず走って来たんだね。

由弦は思った。

「こんな時のために、何枚か替えは持ってるから大丈夫よ」

二人タクシーの中で手を繋いだ。

そして会社に着いて、ドアが開くと別れを惜しむように互いに手を離した。

本社へ戻って行く珉珠のタクシーを見送った由弦。


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