漢江のほとりで待ってる
すっかり由弦は慶太に呼ばれていたことを忘れて、自分の持ち場に戻った。
そして、由弦はさっきのキスのことを思い出し、唇を尖らせて、ニヤついていた。
そこへ電話が鳴り、見ると慶太からだった。
「はい」
「お前が来るの待っていたんだが、青木君に伝言を頼んでおいたんだが、聞いてないのか?いきなり二人で走って出て行くからびっくりしたぞ!とにかく、本家に顔を出せ。お爺様もお前が帰って来るの楽しみに、首を長くして待ってらっしゃるぞ!いいか?今日明日でなくてもいいから、十五日には絶対帰って来い!分かったな!あと、今度のプレゼンは本社で行うことになった。みんながお前に期待しているぞ!」
慶太は気を引き締めてやれよ!と言う意味で活を入れた。
「あ!そうだった!ごめん。うっかりしてた。うん。本社か……分かったよ。あ!兄貴、今夜、青木さんと食事するんでしょ?」
「そうだが?それがどうかしたか?」
「ううん。何でもない」
「そうか?なら切るぞ」
「うん」
珉珠とは心通わせたものの、どこか由弦の心は複雑だった。