漢江のほとりで待ってる


本社では、身なりを整えた珉珠は、いきなり会社を飛び出した理由をどう話そうか考えていた。

慶太に、由弦と付き合っているなんて言える訳もなく、折を見て話そうと考えた。

そして、もう一つ気になること。今夜、副社長に確かめたいことがあった。

珉珠の母の事務所にいた少年のことと、寄付をした人物のこと。

珉珠が知っている慶太の内事情は、慶太の母親が韓国人であること。

慶太の父である社長は、韓国の財閥の令嬢と結婚していたこと。

珉珠の母が言っていた少年(イ・ジュン)の母親も韓国人。

高級車で迎えに来て、その少年が去ってから多額の寄付。それも十年も続けられる人物。

その条件と財力が合致するのは慶太しか考えられなかった。ただ一つの条件を除いては……

色んなことを頭に巡らせたあと、珉珠は副社長室に行った。

「用は済んだかな?」

入るなり慶太の方から声を掛けて来た。

「はい。突然飛び出してすみませんでした」

「そんなことよりも、いやさっき由弦に電話をしてた所なんだ。こっちに来ていたのにすぐ出て行ってしまうから。CM作成の件で話も直接聞きたかったんだが、ま、用件は伝えたから良しとするか?あぁ約束は今日だったね?」

二人が飛び出した事には気にも留めない様子の慶太。

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