漢江のほとりで待ってる
「総支配人さんは、お食事されないのですか?」
「私、仕事中なので」
「では、お願い事を聞いて頂けませんか?お客、私の個人的な要望なんですが、総支配人さんと一緒に食事がしたいです。今日は特別な日ですよ?」
「そうですね、お客様の要望とあれば仕方ありませんね。満足して頂かないと意味がありませんから」
そう言って珉珠の向かいに座った。
ワインで改めて乾杯した。
メインのまず魚を、「身だけをお取りします」と言い、鮮やかな手さばきで、身と骨を取り分けた。
「お口の中で小骨が紛れている場合は速やかにお出しください」そう言うと、それ用の小皿も置いた。
それからもう一つのメインである肉、そして、デザートも運んできた。
「おいしい?」と由弦。
「えぇ、とっても。あなたの手作りだから余計だわ」
「よかった!デザートはね?もう一つあるんだ」
「私もうお腹いっぱいよ?」
「食べるのはまたあとでいいから、雰囲気だけでも味わって」
由弦が運んできたのはデコレーションケーキだった。
「まさかこれも手作り!?」
「そうだよ!」
「フルコースとケーキまで、これだけ作るのに大変だったでしょう」
「まぁね?でもこういうの一回やってみたかったんだ」
由弦はロウソクに灯し、電気を消した。
「ほんとに素敵だわ!由弦ありがとう」
二人はしばし、それを眺めた。
「降るかな~」窓の方を見つめ、由弦が言った。
「どうかしら」
「何か変な感じ」
「どうして?」
「だって去年は別々に過ごしてたから、ちょっと幸せを感じるとあとがこわいよ」
「大丈夫!私達は離れない!今度はどんなものでも二人で乗り越えて行くんだから」
珉珠の方を向いて、二度ほどうなづいた由弦。