漢江のほとりで待ってる

そう締め括られていた。

読み終わると同時に、由弦は号泣した。

「母さん……っ!」

―――― 今でも、おにぎり大好きだよ!母さんの握った塩むすびが一番好きだ。

「きっとオレは、成人していく中で、どこかでオレは生まれて来てはいけない人間なんだと思っていた、愛されてないなんて思ったこともあった。けど、母さんは、オレに生まれて来てくれてありがとうって……そんなことも分からないなんてオレは……許すどころか、人を恨み、陥れた。好きな人まで傷付けて……あれから月日は経ったのに、大人になったオレは、母さんとの約束を守れてない」

手紙を握りしめて話す由弦、そして視線を珉珠に向けて、

「婚約パーティーのあなたを見た時、華やかできらきらした、とても綺麗なあなたに嫉妬して、自信を失ったと同時に、復讐心を覚えた。オレが記憶を失くしてる間、ずっと傍にいてくれたあなたに、あなたがどんな気持ちでいたかなんて考えもせず、何を差し置いても一番忘れてはいけない人なのに、兄貴と婚約したあなたを、あなたの幸せを願いながらも、ホントは心のどこかで許せずにいた。でも一番許せないのは、あなたのことを忘れていた自分自身、自分が一番許せない!」

握り拳で自分の胸を殴りながら嘆いた。

「由弦!でもこうして今、あなたはちゃんと私と向き合ってくれている。互いに傷付け合ったけど、今素直な気持ちで向き合って許し合い、傍にいる。あなたは、お母様との約束もずっと守ってる!」

珉珠は由弦を抱きしめた。

由弦の中にあった、長年の胸のしこりが取り除かれ、恨みの炎が完全に消えた瞬間だった。

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