漢江のほとりで待ってる


「うん。私も知ってる。」

「……逢いたいよ」

「じゃ~逢う?」

「無理じゃん!もう自宅でしょ?」

「うん。家来る?」

「何だよそれ!行けないの分かってて言うんだね!オレあなたの家知らないもん!」

「じゃあ、会社まで迎えに行くから、一緒に帰ろ?」

「いいよ」

「どうして?」

「あなたのこと大事に思ってるから。下心だけって思われたくないから!そりゃ~エッチなこといっぱい考えるけどさ?」

「あははははは。うん。分かった。あなたの気持ちとても大事にする!ありがとう。頑張って!それと気を付けて帰ってね?」

「うん。ありがとう。じゃぁまたな?」

「はい。またね?」

電話を切ったあとも、珉珠の心は踊っていた。

今までにないタイプの男性。駆け引きなく自分を素直に表現出来る。

自分でもびっくりするようなことを言ってみたり。

自分の中で固く閉ざしていた何かが開かれて行き、息苦しいものが溶けて行く感覚。

由弦、彼は安心感と温かさを与えてくれる人、彼の前では自分を飾らなくていい。珉珠はそう思った。


< 39 / 389 >

この作品をシェア

pagetop