漢江のほとりで待ってる


帰り道、珉珠と二人きり。歩きながらすかさず由弦は珉珠の手を握った。

「ねぇ?さっき泣いてたみたいだけどホントに大丈夫なの?」

「ほんとに何でもないから、大丈夫よ?ほんとよ?」

「それならいいんだけど」

「あ!そうだ」

珉珠はそう言うと何やらバッグから取り出した。

「お誕生日おめでとう!由弦」

「えっ!?あ!ありがとう!!」

受け取ったあと、綺麗に包装されたプレゼントを、嬉しそうにしばらく眺めている由弦。まさか珉珠にプレゼントされるなんて思いもしなかったから。

「開けてみて?気にいるといいんだけど」

開けてみると、個性的なデザインで、また派手さはないのに、しっかりと存在をアピールしたグレード感溢れた時計だった。

自分では選ばないであろう、由弦がスーツを着た時、紳士的かつ、オシャレに見えるように、由弦のために選んでくれた、珉珠のお見立て。

「わぁ~!すげぇな」

喜ぶ由弦に珉珠は時計を由弦に付けてやった。

「やっぱり似合ってた!素敵よ?」

そう言うと珉珠は自分の腕を見せた。彼女の腕を見てみると、ペアの腕時計だった。

思わず由弦は嬉しくて珉珠を抱き締めた。

「ありがとう。青木さん」

「ん?青木さん?青木さんて呼んだり、珉珠さんて呼んだり一貫性がないのね?」

「その時の気分だよ。でもホントは名前で呼びたい!」

「なら名前で呼んでください。由弦」

「うん。珉珠!……さん」

あとに申し訳なく敬称をつけた由弦の言い方に、珉珠は笑った。

「あ!そうだ。女性から男性に時計をプレゼントする意味知ってる?」

「知らない」

「あなたと同じ時間を過ごしたい、あなたの時間を束縛したい、なんですって」

「そうなんだ?」

「だからって重く受け取らないで?でも同じ時間を過ごしたいって言うのはほんとよ?」

珉珠が言ったあと、由弦は弾ける笑顔で、また珉珠を抱き締めた。

そして、この間のキスより長めの、プチ大人なキスを交わした。



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