漢江のほとりで待ってる
「瑞草区!?あなたの家は裕福なんだね?オレ、そこ行ったことあるよ。最高裁判所があったり、音楽と芸術の街、構想ビルが立ち並ぶ割に緑が意外と多いなって。とにかくお金持ちの街って印象だった。あの噴水には圧倒されたな!あの森を幼いあなたは駆け回っていたのかな」
「ふふ。よく知ってるわね?裕福かどうかは分からないけど、母は郊外で暮らしながらボランティアの仕事をしてるの」
「そうなんだ?何だか不思議な縁を感じる。……オレ、初めてあなたに会った時から、握手したあの時そう思ったんだ!あなたの瞳に吸い寄せられた。真顔から不意に笑った時の、優しく垂れ下がる可愛らしい瞳。その瞳が好き。笑顔見たさに、あなたに会いに行ってた」
珉珠は、はにかんだ。
「ありがとう。私の顔のことなんて誰も褒めたことないのに。冷たい目をした女!って」
「そんなことないよ?男社員なんて、あなたのこと綺麗だって言ってるよ?でもオレはあなたの容姿だけで好きになったんじゃないからね?」
「分かってるわ。ありがとう。日本に来てから言葉も分からない上に、必死で日本語の勉強や大学の勉強、そして就職。心にも余裕なんてなかった。ただがむしゃらに突っ走ってた感じね。感動すらもここ何年もしてないかも。あ、でもあなたが来てから、少し変わったかもしれない」
「どうんな風に?」
「初めはとても戸惑ったのよ?あなたの存在や言動に。私何でか分からないけど、全て諦めてる所があったり、何も誰も受け入れないって心を固く閉ざしてた所があった。それが、あなたに会ってから、とてもドキドキしたり、心が和んだり、温かくなったり……とても不思議な人だわ、あなたって。」
珉珠は由弦の顔を見て笑った。そして二人より添った。