漢江のほとりで待ってる
由弦は副社長室を後にした。
「秘書か……二人の信頼関係は言うまでもない! しかしそれ以上に彼女を見れば分かる。兄貴にとっては、きっと彼女は、秘書としては信頼しているものの、秘書以上それ以下でもない。人に関心を示すタイプじゃないからな……でも彼女は違うよな」
二人を見て由弦は思った。
彼女の慶太に対する眼差しは、尊意を持ちながら、一人の男として見ている。由弦はそう感じていた。
由弦が出て行ったあと、副社長室では、
「仲がよろしいんですね?」
「ん? あぁ。小さな頃弟は泣き虫で、私のあとをよく追いかけて来た。あんな甘えん坊の泣き虫があんなに大きくなって……」
「目元が副社長によく似ていらっしゃいます」
「そうか? 由弦とは腹違いの兄弟なんだが、あいつが中学に上がる頃には離れ離れに暮らすことになって……会うたび、弟の周りにはいつも笑顔が絶えなくて、私も由弦の笑顔に癒された一人だ」
感慨深い顔をする慶太を見て、珉珠も微笑んだ。
「弟のサポート、よろしく頼む」
「かしこまりました、副社長」