漢江のほとりで待ってる



プレゼンも無事終わり、採用され、撮影まで漕ぎつけた制作チーム。制作会社と共に綿密に打ち合わせが始まった。

それと並行して、会長の古くからの友人の企業と、高柳グループとの親善野球大会が行われることになった。

高柳会長とその友人は、高校時代に同じ野球部で苦楽を共にした戦友。その付き合いは今尚続いている。互いの会社の友好を深めるためにも、年に一度開催されいる、一大イベントの一つ。各々の企業から選手を選出。

由弦もメンバーの一人として選ばれた。

由弦もまた小学校と中学校と野球部に所属し活躍をしていた。なので今回の大会は、由弦が高柳の一員として、初めての大きな役割を果たす見せ場としても、会長はかなり期待をしていた。それと、苦労して育った可愛い孫の、初お披露目の場でもあった。

選出されたメンバーは、通常業務をこなしながら(多少の仕事免除有)、忙しい最中、大会当日のために練習も行った。

そんな中で、企業一丸となって行う一大イベントを、慶太は毎年疎ましく思っていた。

まず、体を動かすことが苦手で、大勢で行うスポーツは大嫌い。

何より慶太は、体や服が汚れるのが耐えられない。まして野球なんて、泥まみれになるなんて以ての外!人と触れ合うことも好まない。大衆が利用するスポーツクラブ、ロッカールームやシャワー室の利用は絶対にしなかった。

そう!慶太は潔癖症で完璧主義!ネクタイの歪みでさえ、他人に直されたくない。

ただ慶太に触れていいのは、母、雅羅だけだった。

あと、もう一つ疎ましく思う理由は、会社にとって何のメリットもない、まず経費の無駄!会場を貸切るだけでもバカにならない!選手のユニホーム代、その選手達の食事代、細かいものを挙げて行けばキリがない!

友好を深めるために、野球大会を行うという必要性を感じられない。

仕事は仲良しこよしでやる訳ではないのに、親善を深めるために、もっと別の方法をとってもよいはず!とその都度思っていた。


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