漢江のほとりで待ってる
その頃、由弦のCM作成は順調に進んでいた。
制作会社と共に、話し合いを繰り返し、タレントの起用や、ロケの場所と細かな日程まで決まり、いよいよ撮影にかかろうとしていた。
B.A.Bと本社を忙しく行き来している由弦。専務室のソファで仮眠を取っていた。
そこへ珉珠がやって来た。眠っている由弦に気付く。そして、そっと傍に行き、頭をそっと上げて自分の膝に寝かせようとした。
その動作に目を覚まし起き上がる由弦。
「あ、珉珠さん。何であなたがここにいるの?」
「どうしてかしら?」笑顔で珉珠が答えた。
「どうして?緊急?」
目を赤くして、眠い目をこ擦りながら珉珠に聞き返す由弦。
「眠い?」
「うん」
「ならもう少し眠ってて?」
そう言うと珉珠はまた自分の膝で眠らせた。
珉珠は優しく由弦の髪を撫でた。
由弦は珉珠の方に寝返りを打った。
しばらくして、いきなり起き上がった由弦。
「ドキドキして眠れないよ」
由弦の言葉に珉珠は微笑む。
「あなたの安眠を奪っちゃったわね」
由弦の頬に手を当て珉珠は申し訳なさそうに言った。
「大丈夫だよ。それまとめたら帰ろうと思ってたから。でもどうしても睡魔に勝てなくてぶっ倒れた」
机にある書類に視線をやったあと、珉珠を見て由弦は答えた。
「そうだったの?」
「うん。終わらせたら一緒に帰れる?でも何であなたがここに?」
「申し遅れました。今日から高柳専務の秘書をさせて頂きます、青木珉珠と申します。どうぞ宜しくお願い致します」
と由弦の前に立ち、深々と頭を下げて、珉珠は自己紹介した。