漢江のほとりで待ってる
「へっ!?」
思わず由弦は立ち上がった。
「専務が仕事終えられましたら、お声をお掛けください。ご一緒に退社いたします」
珉珠はクスっと笑って答えた。
「どういうこと?」
「社長から直々に、あなたの秘書をするようお願いされたの」
「そうなの!?でも何でだろう……だって、珉珠さんは長年兄貴の片腕だったのに。兄貴はそれで納得したのかな」
「私にもその意図は分からないけれど、私は言われたことに従うことしか出来ないから」
「うん。そうだね。残念?兄貴から離れるの」
「ううん?仕事だから。自分の仕事を全うするだけよ?仮にもし副社長に感情移入していたら、長く勤められなかったと思う。尊敬はしているけれど、それ以上の感情は持ってないわ」
「そっか。オレも青木秘書に尊敬してもらえるように頑張るよ。こちらこそどうぞよろしく」
手を出して握手を求めた由弦。握り返した珉珠の手を強引に引き寄せ抱き締めた。
「ちょっとだけこのまま」と由弦。
びっくりしたものの、由弦の腕の中で緊張を解いた珉珠。
かけがえのない、大好きな人が、仕事でも傍にいてくれる。
今までに味わったことのない温もりを、ひしひしと感じていた由弦だった。