漢江のほとりで待ってる
場所はAwaken株式会社の応接室。
「久しぶりだな? 高柳! 元気にしてたか? もう落ち着いたか?」
「元気だよ! ありがとう、何とか耐えてるよ! しかしホント久しぶりだな? 一条は相変わらず元気そうで何よりだ!」
「そか。日本に戻って来るとは聞いていたが、それ以前に、お前から突然の電話びっくりしたぞ?」
「もう言わないでくれ。醜態晒したな。お前にしか言える人間はいないから。まさかフラれるなんて思ってなかったからな」
「ホントだよ! お前達結婚するものだと思ってたから」
「ふっ。けど、もう振り向かないよ! 前をちゃんと向いてるし、人のものになった女のことをいつまでも追い掛けるほど暇じゃないし」
「そうなのか? それならいいけど。またいい人と出会えるさ! それはそうと、お前うちの会社辞めてからもずっと、デザインの仕事はしてたそうじゃないか。創立メンバーであるお前が辞めると言い出した時は、正直頭抱えたぞ!」
「あぁ~、あれはホントにすまない。何でかあの時、腑抜けになってしまって、その先のこと何も考えられなくなったんだ。食っていくためにやっぱり、デザインの仕事は捨てきれなかったよ」
「基本好きなんだよ。何かを創作するってこと。でもまぁ、またこうして一緒に仕事をすることになったんだし、よろしく頼む! 弊社は今回のコラボにおいて、お前を信任している! 何かあれば遠慮なく言ってくれ!」
「ああ。それと上海進出おめでとう! その事なんだが、今回のコラボの制作スタッフ、そちらの推薦ではなく、オレに選定させてほしい! 少なくともこの会社を自分の目で見て来て、その世界に精通した人材がいることも、信頼できる仕事をしてくれる人間がいることも、ここにはいると確信いているから!」
「もちろんだ! オレもお前を信頼している! よろしく頼む!」
「ありがとう! こちらこそよろしく!」
かつての仕事仲間同士、がっちりと握手を交わした。