漢江のほとりで待ってる
実際にクライアントの商品を参考にするため、店舗に出向く由弦。
「高柳出て来ます!」
「あ! CD(クリエイティブディレクター)! 私も行きます!」
そう言うのは、CMプランナー担当、仲里優那(二八)だった。
彼女は、お洒落に関してはさほど関心はなく、髪はいつも一本に括りパンツスタイルでボーイッシュなタイプ。感が鋭い。
初めて由弦を見た時から彼に興味を持っていた。
「私も行きま~す!」
そこへ割って入って来るように新人の甲斐愛梨(かいあいり、二二)が走って来た。
甲斐愛梨は今風の女の子。お洒落にとても敏感で、いつも自慢の足を見せる。頼りなく見せながら、あざとい女子。
「企画書はどうした?」と甲斐愛梨に由弦は言った。
「実際に現場を見ないと良い案も出るものも出ないですぅ!」
と唇尖らせながら、上目遣いで甲斐愛梨は答えた。彼女は事実由弦狙いで、近付くための機会を伺っていた。
エレベーターを待っていると、本社から来ていた慶太と珉珠が降りて来た。
周りが一礼する中、慶太は由弦を見るなり、
「頑張ってるようだな? 期待してるぞ!」
と肩をぽんと軽く叩いて去って行った。
そのあとを歩いていた、珉珠のキリっとした視線が由弦に向けられ、その目元が緩んで、軽く会釈をして通り過ぎて行った。
一瞬ドキッとして、その表情が由弦の胸の中に印象付けられた。