漢江のほとりで待ってる
一方、会議から戻って来た由弦、デスクの上に置いていたデザイン画がないことに気が付く。
珉珠にそれを訪ねると、当然のことながら心当たりがないと言う。
更に企画書まで無くなっていることに気付き、部屋中を探し回った。
会議で部屋を出るまで、何をしたか、変わったことはなかったか、焦りつつ記憶を辿った。
そして、妙な点に気が付いた。
普段自分の部屋には、滅多に来ない人物のことを思い出した。
そしてすぐに、同じように探してくれている珉珠に、椎名と連絡を取るよう頼んだ。
だが、椎名は出張中でいないと返って来た。
コンペまでには一から描いてる時間はもうなかった。
けれど、悩んでる暇はなく、由弦はまたデザイン画を描き始める。
イベントの企画は頭の中に入っている。デザイン画さえ出来上がれば、その思いだけで必死で描き出した。
ただ描き上げるだけなら、描き手が誰でもいいように簡単だったが、やはり天才クリエイターとしてのこだわりは、時間の経過に追いつくことはなかった。
限られた期間に、自信を持って発表出来る、納得の行く作品は出来そうもなかった。
由弦の努力を嘲笑うかのように、時間は過ぎて行く。
珉珠は珉珠で、見ていることしか出来ない自分に歯痒さを覚えながら、せめて彼が体を壊さないようにと、心身共に徹底してサポートに回った。