漢江のほとりで待ってる


即座にこれにも慶太は対応した。

「クリストファー氏の作品が、高柳由弦氏の絵を盗作したのではないか!という噂にはどう思われますか?」

通訳を介して、番組の司会者よりクリストファーに質問された。

「私も困っているのですよ!私が盗作だなんて馬鹿げてる。あるとするなら~高柳氏ではないですかね?彼は以前、彼がまだ有名になる前の話ですが、私のファンだと言って来てアトリエに遊びに来たことがありました。その頃から私は今日の日のために、今の作品などを斬新にすべく温めていました。恐らく、その時に盗まれたかと……いや~由弦を友だと信じていたのに」

「では、その時から、今回の絵画展のような画風は出来上がっていたということですか?」

「そうですね」

「ではなぜ、高柳氏に問い詰めなかったのですか?」

「瞬く間に彼は時の人になりましたから。芸術家の卵は誰もが日の目を見ることを望みます。私がそのチャンスを与えたのだと思ってその時は目をつむりました。でも、罪は必ず明らかにされると信じていました。それが今だと。人の才能で有名になっても長続きはしない。神は真実を知っている」

クリストファーはそう締め括った。

慶太はクリストファーをテレビに出演させ、そう断言させた。

連日報道でクリストファーはテレビに出ない日がないほど。

その動向を見守っていた由弦は、その報道を見て、

「嘘だ!接点はおろか、クリストファーなんて会ったこともないのに!彼の活躍していた時期はオレはまだ子供だった!何でこんなすぐバレるような嘘まで付くんだ!」

もはや理解不能だった。有り得ないことが起きていた。

それからのマスコミ各社は、「CGデザイン界の偉才、高柳由弦氏、盗作!!天才からの墜落!友の作品を盗んだ凡才!」と書き立てた。

由弦が今までデザインした企業のキャラクターなど、由弦の手掛けたもの、「高柳由弦」と付くもの全て、「イメージが悪い!!盗作など使えない!」と取り消され、流れていたCMもストップされた。

世間は手の平を返すように由弦を犯罪者扱いにした。ネットでは心無い誹謗中傷の嵐。

相次ぐキャンセルに、本社だけでなく、高柳グループ全体がこの事件の対応に追われた。

「高柳グループ、信頼失墜!」大きな見出しまで出た。

さらに、「社長に愛人!!副社長と専務、異母兄弟!二人の確執!熾烈な相続争い!」とネタは本筋から離れ、記事はプライベートなことにまで及んび、テレビでも毎日のようにそれが流された。

由弦は一条からの電話があって以来、連日マスコミにも追われ、会社には出入り出来なくなってしまった。

本社からも、「君がそんなことをするはずがない!信じている!」と上辺だけの声を掛けられ、騒ぎが収まるまでと、会社には来るなという意味の自宅待機を言い渡された。

それからコンペはおろか、大手菓子メーカからの依頼自体なくなった。

由弦に来ていた依頼は全て消えた。

慶太の筋書き通り事は運んだ。


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