キンダーガーテン 二   ~優しい居場所に~
でも………

先生がうちのお父さん達と逢ってくれた時は……

今の何倍も緊張したはずだよね………

相手の親に逢うのって…想像以上に緊張する。

まして先生が唯の家に来たときって…

『オレの家で過ごさせて下さい。』って…無茶なお願いまで。

"殴られる覚悟で行ったよ"って言葉は……本当だったんだね。

先生のお母さんには『いらっしゃい』って言ってもらえて

お兄さん達にも『気軽においで』って言われてるのに

先生の家族って思うと、嫌われたくなくて…緊張しちゃうね。

自分が同じ立場になって初めて……

また先生の優しさに気づいたよ。

唯のことが唯以上に分かってる先生は

唯がメイクでグズったり、釣り合わないと支度が遅い訳も分かってる。

行きたくない訳じゃないの。

『いらっしゃい』って言われたことだって…ホントに嬉しい。

先生の産まれたお家だって…見てみたい。

…………でも…やっぱり、ちょっと不安。

「浴衣、止める?花火だけ見れば…寄らずに行けるよ。」

誰よりも唯に甘い先生は……やっぱりこう言ってくれるね。

でも本当は次に唯が言う言葉だって分かってて

「ううん。浴衣、着たいもん。先生のお家に連れてって。
………花火に行ったら、リンゴ飴買ってね。」

「リンゴ、嫌いなのに?食べれる??」

「リンゴ飴が好きなの!………食べれないけど………。
いつもキラキラして欲しかったのに、お母さんが『食べないからダメ』って言うんだもん。
ワガママ言える人が出来たから…おねだりしてみたの。」

「ハイハイ。
そう言われると…なんだって聞いちゃうね。」

「うん。」

「だったら、そろそろ行こう。
遅くなったら、デートの時間がなくなるよ。」

イチゴの鍵で閉めて………

いってきまぁ~す!!
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